相続問題では,寄与分,特別受益,生前の財産着服等の互いの主張が交錯し,遺言がある場合にも遺留分侵害額請求等の問題があり,一度これらの点で対立してしまうと,相続人間の長年の関係性や思いも相俟って,なかなか当事者同士で解決することは難しくなってしまいます。
弁護士が入ることにより,どの主張が効果的でどの主張が意味がないなどの交通整理をし,争点を明確化した上で,できるだけ早期にかつ適切な解決を実現できるようお手伝いをいたします。
このような状況になっていませんか?
遺言書作成
・将来の相続に備えて,適切な遺言を作成したい
・家業に支障のないよう財産を分けたい
遺産分割
・特別受益や寄与分について争いがあってまとまらない
・一人が遺産を一人じめしている
遺留分侵害額請求
・遺言では,自分は一切財産をもらえなかった。遺留分を主張したい。
・財産を相続したが,遺留分を主張されている
生前の不正使用
・口座を調べたら,親が支出したとは思えない多額の出金があった
・介護していた兄弟が,親の財産を自由に使っていた
遺言無効確認
・自筆証書遺言が出てきたが,相続人の筆跡ではない
・遺言が作成された当時,意思能力が全くなかった
相続放棄・特別縁故者
・亡くなって3か月以上経ってから多額の負債が発覚した
・生前交流があった者が亡くなったが,相続人がいないので,自分がその財産をもらいたい
遺言書作成
将来の相続に備え,遺言書をお考えになる場合,どのような目的で遺言を作成するのかを明確にすべきかと思います。
相続人同士の紛争を防止したいのであれば,遺留分侵害がないまたは請求しにくくなるように内容を調整すべきですし,特定の相続人が後継者として事業を引き継いだことから,株式や事業用資産をその者に相続させた上,相続税の支払についても配慮する必要があります。
また,遺言能力を争われないようにする意味では,遺言以外にも,ご本人の意思や判断能力を示す資料(録音や他の文書)等を準備しておいた方がよい場合もあるでしょう。
相続財産の分け方に限らず,墓の管理や祭祀の承継者,葬儀方法,延命措置についてもご要望に従って遺言に記載することも可能です。
ご依頼を受けた場合,作成者のご意向を伺い,ご希望が実現できるような遺言書案を作成いたします。
遺産分割
① 遺言の有無の確認,遺産分割の必要性の確認
遺言書がない場合は,相続人同士の協議に従い,遺産分割協議を行います。
遺言書がある場合でも,遺言書が無効なときや,遺言書に定めのない遺産があるとき,相続人全員の同意がある場合などは,遺産分割協議を行うことがあります。
② 相続人,相続財産の調査,確定
遺産分割をする場合は,まず相続人や相続財産を調査して,法定相続分がいくらとなるのか,分割対象財産が何であるのかを確定します。
この点について争いがある場合には,まず訴訟によってその問題を確定します。
③ 争点の整理…特別受益,寄与分,遺産評価額,分割方法
遺産分割協議が開始しても,生前贈与を受けている相続人や,家業の手伝いや介護により相続財産が増加・維持されたといえる場合は,特別受益や寄与分が問題となり,そのような事情がなくても,遺産の評価額の争い,分割方法についての対立がある場合には,当事者同士の協議の成立は難航します。
④ 遺産分割調停
当事者同士の協議が成立しない場合,家庭裁判所の調停を申立て,調停委員2名の仲介・助言のもとで,話し合いを継続します(1か月に1回,2時間程度)。
⑤ 遺産分割審判
調停手続でも解決しない場合には,最終的に遺産分割審判により,裁判所が分割方法を決定します。
遺産分割審判となる場合には,争点に関する書面や証拠を提出します。この段階で弁護士に依頼する方法もありますが,それまでの主張内容も前提に判断されますので,意見の対立が激しい場合は,審判を想定して,最初から弁護士に依頼して主張を構成した方が,ご希望に沿った解決に導きやすくなります。
遺留分侵害額請求
遺留分とは,遺言の内容に関わらず,法律上最低限取得できる財産のことをいいます。
法改正により,請求はあくまで金銭に限られ,相続財産そのものの引き渡し等を求めることはできなくなりました。
遺留分は,被相続人の配偶者,子,直系尊属(父母や祖父母)のみが認められ,兄弟姉妹にはない点に注意が必要です。
●遺留分割合
遺留分割合は,法定相続分に次の割合を乗じて算出します。通常は②のケースが多いと思われます。
① 直系尊属のみが相続人である場合 3分の1
② それ以外の場合 2分の1
●行使期間
遺留分侵害額請求は,相続の発生と,遺留分を侵害する遺言や贈与があったことを知ってから1年以内に行使する必要があります。
請求には金額の特定までは不要ですので,できるだけ早く遺留分侵害額請求の意思表示をしておくことが必要です。(請求した事実の証拠を残すため,内容証明郵便による通知が適切です)
●調停・訴訟
当事者間の話し合いが成立しない場合には,まず調停を申立て,調停で解決しない場合には訴訟を提起することになります。
生前の不正使用
生前に,被相続人と同居したり,その財産を管理している相続人がいる場合,被相続人が支出したとは考え難い多額の口座出金等があり,これが原因で揉めるケースがしばしば見られます。
このような事案では,①誰が引き出したのか(出金者の特定),②誰が取得したのか(取得者の特定)などについて争いが起こります。①や②について特定可能な証拠がそろい,取得者による着服ということになれば,被相続人が取得者に対して持つ返還請求権を相続したことに基づいて,他の相続人が取得者に対して返還請求をすることになりますし,取得者が贈与を受けたということになれば,遺留分や特別受益の問題として処理されます。
しかし,①②の特定は非常に困難であり,最終的には裁判所の判断を求めることになるケースが多いと思われます。
遺言無効確認
方式違反や証人欠格などの明確な法律違反による無効の場合には,わかりやすいのですが,自筆証書遺言の自筆性や,遺言能力の欠如などを理由とする場合は,証拠等によって判断されることになり,話し合いで決着が付きづらく,遺言無効確認訴訟に発展することがあります。
裁判の場合,証拠が重要となりますので,自筆性を争う場合には,被相続人の筆跡が分かる他の資料の存在,遺言能力を争う場合には,当時のカルテや要介護認定の際の資料,当時の診断書などが必要となると考えられます。
相続関連の裁判所に対する手続
相続放棄
被相続人の財産について相続の権利を放棄する手続で,相続開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所に,相続放棄の申述書を提出する必要があります。
相続放棄によって,最初から相続人ではなかったことになり,同順位の人の相続分が増加したり,相続権が次順位の人に移ることもあります。
相続放棄は,3か月という期間制限がありますが,これを超えていても,場合によっては放棄の申述が認められる余地があります。
そのためには一定の事情があることの主張や証拠が必要となりますので,弁護士に早期に相談する必要があります。
特別縁故者の財産分与
相続人がいない場合,相続人と一定の関係にあった者(特別縁故者)に対して,特別に財産を取得させる制度です。
特別縁故者には,①被相続人と生計を同じくしていた者,②被相続人の療養看護に努めた者,③その他①②に準ずる程度の密接な関係にあった者が該当します。
具体的にどの程度の財産を分与するかは,特別縁故の内容,程度,年齢,職業,相続財産の種類,所在等一切の事情を考慮して裁判所が決定します。
申立てのためには,まず,相続財産管理人選任を申立て,家庭裁判所により弁護士等の専門家が選任され,その公告後,相続債権者・受遺者に対する請求申出の公告・催告,相続人捜索の公告等を行い,相続人不存在が確定した後に初めて,特別縁故者の財産分与の申立ができます。
公告期間が合計で10か月程度に及びますので,特別縁故者の財産分与申立までにはご依頼から1年程度かかる可能性があります。
祭祀主催者の選定
それほど多くはありませんが,墓碑や遺骨の権利を争い,祭祀主催者の指定に関する調停や審判に及ぶことがあります。
審判により裁判所が指定する場合,地域や慣習,被相続人の身分関係,生活関係,被相続人の意思,祭祀承継の意思や能力,祭具等の取得の目的や管理の経緯,その他一切の事情を考慮して総合的に判断されます。
遺産相続問題について、弁護士渡辺まで、お気軽にお問い合わせください。